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M&A(エムアンドエー)の目的のひとつ。敵対的買収と防衛対策について徹底解説

近年、日本国内行われるM&Aの件数は約3000件にのぼるとも言われ、身近な取引になってきています。

そんなM&Aの全てが、円満に行われるわけではありません。買収企業が、買収対象企業の合意を得ることなく買収を仕掛ける敵対的M&Aという手法がありますが、これは違法なものではなく、確立された手法です。

そこで今回はこの一見物騒に思える敵対的買収とその防衛策について詳しく解説していきます。

敵対的買収とは

敵対的買収とは、買収対象企業の経営陣の意向に反して対象企業の株式を買い集めることで、経営権を奪い取ります。

そのため買手企業と対象企業の経営陣の関係は敵対的な関係になります。

「敵対的」という名前から悪い印象を持たれがちですが、従業員、顧客などには友好的な場合もあり、内情は案件によって多種多様です。

敵対的買収にはどのような方法があるのか、詳しく解説します。

敵対的買収の方法

敵対的買収は、買収企業が買収対象の企業の合意を得ることなく経営権を奪い取るM&Aの手法のことです。

買収対象企業に関わる全ての人に敵対的であるわけではなく、あくまで株式を持つ株主に対して敵対的な行動をとります。

敵対的買収で活用される手法がTOB(株式公開買い付け)です。

TOBを行う場合、一般的に通常の株価の20〜50%割増で買収します。そのため、買収会社は相応の資金力が必要となります。

敵対的買収には他にも注意が必要です。

例えば、過去にライブドアや王子製紙が敵対的買収を試みました。買収規模が大きければ、メディアから注目を受け論争が捲き起こるだけでなく、成功する確率が低いため、企業価値を損ねてしまうこともあります。

そのため、国内での敵対的買収の多くは、最終的は経営陣間で合意を結ぶ友好的買収に向けて調整が水面下で行われます。

それでは、敵対的買収の標的になりやすい企業には、どのような特徴があるのでしょうか。

●株主の構成が不安定

例えば、利益志向の強い投資家で株主が構成されている場合です。

株主が得られる利益が大きいと判断した場合、買収企業による経営陣の変更を受け入れる可能性が高まります。

●高い技術力やノウハウを持つ企業

M&Aで多くの企業は売り上げ規模の拡大やシナジー効果を得ることを期待します。

そのため、短期間に効率的にとうした効果を獲得したいと考える買収企業は、高い技術力やノウハウを持つ企業に狙いを定める傾向にあります。

敵対的買収の事例1:伊藤忠によるデサントの買収

2019年3月に大手商社の伊藤忠が、スポーツウェア大手のデサントを敵対的に買収した事例をご紹介します。

デサントの長年の筆頭株主だった伊藤忠はデサント側に経営の改善を長年求めてきました。

伊藤忠の思惑は、デサントに中国進出を積極的に拡大することでした。一方のデサントは国内を中心に高付加価値ブランドを展開することを望んでおり、交渉は難航。

結果、これ以上の進展を望めないと判断した伊藤忠商事は、子会社のBSインベストメントを通じ、約200億円を投じてTOB(株式公開買い付け)を実施しました。

当初デサントは、伊藤忠のTOBに対し明確な反対意見を表明しまし、伊藤忠側が譲歩。両社の水面下での交渉が進み、取締役会で和解案を議決し公表する段取りまでを取り決めていました。

しかし、合意直後にデサントの経営陣が決定を翻しました。

これにより伊藤忠は交渉打ち切りを決定。デサントの経営陣を排除することを方針を固めました。

伊藤忠はデサント株の最大40%を買い付けに成功し、事実上の経営への支配権を持つことになります。

デサントが独自路線にこだわったのは別の背景もあります。

デサントは過去に2回、経営危機を伊藤忠の支援で乗り切りました。しかし、デサントの社長は伊藤忠から派遣され、伊藤忠から取引拡大を要求する風土が作られたといいます。

今回の合意に翻意した当時の石井社長はそうした慣習の改善を迫っており、伊藤忠に対し不信感を募らせていたといいます。

今回の敵対的買収の結果、デサントの経営に対し全面的に参画することになりました。しかし、今回のM&Aは、一部の経営陣の感情的な問題が原因だった評価されること少なくありません。

デサントの経営権を握った伊藤忠は、社員との信頼関係の構築が急務となっています。

敵対的買収の事例2:スカラによるソフトブレーンの買収

次に、ECサイト活用サポートなどのスカラが、ソフト開発や販売を手がけるソフトブレーンに行った敵対的M&Aについてご紹介します。

スカラは、ソフトブレーンの持つノウハウや顧客基盤などの共有を目的に2016年5月16日から20日の間に、株式の2.7%を取得しました。

金融庁は、TOB(株式公開買い付け)において透明性や公正性を確保するため、他株式の買い付け後に5%以上になる場合、目的や価格を公表することを義務付けています。

スカラは、M&Aの第一段階として、この規則に触れない程度に株式を保有。そして、翌月にソフトブレーンの社長に訪問し、株式の取得を表明。持分法適用会社にしたいという旨を伝え、ソフトブレーンの株式を40%を買い付けを実施ました。

ソフトブレーンが敵対的買収への防衛策を設けていなかったことも追い風となり、M&Aが成功したとも言われています。

敵対的買収の防衛策

M&Aが盛んに行われているアメリカでは、企業的価値を守る意味でも、敵対的M&Aに対する防衛策は広く認められています。
M&Aが日本国内でお一般的になっているからこそ、敵対的M&Aは対岸の火事と言い切ることはどの企業にもできません。企業を守るためにも、防衛策の検討が不可欠です。

以下では、敵対的買収の防衛方法についてご紹介します。

敵対的買収の防衛方法

以下の防衛方法は、特に、敵対的買収をかけられてから行うものに絞ってご紹介します。

⑴友好的な第三者と連携する

●第三者割当増資を実施する

企業の発行株式数を増やすことで買収者の持株比率を低く押さえる戦略です。

また、増資分を友好的な第三者に保有してもらうことで安定株主を増やし、買収者による株式取得を行わせにくくさせます。

●新株予約権の発行

友好関係にある第三者に新株予約権を発行する戦略です。

これは、第三者割当増資と同じ効果を狙っています。

●第三者との株式の交換や合併

他社と株式の交換や合併を行う戦略です。

友好関係にあることが前提ですが、企業体制を強化し、買収者を退けることを狙います。

●パックマンディフェンス

敵対的買収を仕掛けてきた企業に対し、今度はこちらから買収を仕掛ける防衛です。

パックマンディフェンスを開始すれば、全面的な買収の戦いとなります。

日本でパックマンディフェンスを実行する際の基準は、株式全体の25%の取得です。

会社法では、株式を相互に保有する場合、相手企業の25%の議席権を保有していれば、相互保有対象が対象となる議決を行使することができません。

●ホワイトナイト

敵対的買収を仕掛けられた企業が、新たに友好的な買収者を見つけ、買収や合併を実行してもらう戦略のことです。

友好的な買収者を「ホワイトナイト」と呼びます。

敵対的買収を仕掛けられた企業にとって苦肉の策であることは間違いありません。

しかし、敵対的であるよりは、友好的な企業の傘下に入ることで、現状の企業価値を維持できると判断した場合に行われる傾向があります。

防衛成功事例:フリージア・マクロスによるソレキアの買収

ここでは、敵対的買収から防衛に成功したフロージア・マクロスによるソレキアの買収の事例をご紹介します。

フリージア・マクロスは押出機・アスファルト試験機などを取り扱う大手産業メーカーです。

一方のソレキアは、ITに関するシステム設計や運用、保守などを手掛けています。

2016年11月にフリージア・マクロスがソレキアに対し敵対的M&Aとして株式の買収を開始しました。

その後2017年2月にTOB(株式公開買い付け)の実施を届け出たことで、ソレキアが富士通に公開買い付けへの対応を依頼します。

ソレキアは、防衛方法にホワイトナイトを選択しました。

富士通はソレキアの対応を受け入れ、2017年2月中旬には、ソレキアを完全子会社化することを宣言しました。

それを受け、ソレキアは3月に開いた取締役会でフリージア・マクロスのTOBへ反対する意見を表明しました。

結果、3月に富士通はソレキアに対するTOBを発表します。ホワイトナイトで依頼していたため、ソレキアはTOBを受け入れ、富士通の完全子会社となりました。

まとめ

今回は、敵対的M&Aと敵対的M&Aから会社を守る防衛策についてご紹介しました。

M&Aが一般的になっている今、敵対的M&Aから会社を防衛する措置を取ることが不可欠です。そうした事前の対策が企業価値を長く維持することを支えてくれるでしょう。