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M&A(エムアンドエー)の手法別!発生する税金についてご紹介

ここでは、M&Aを実行した後にかかる税金について手法別に解説します。

会社を売却する「株式譲渡」と事業を売却する「事業譲渡」では、課税対象や対価を受け取る主体が変わるので、株式譲渡と事業売却のどちらを選ぶかで売り手企業が受け取る金額は変わります。

株式譲渡では、株式の売却代金を受け取った売り手企業の株主が課税対象となります。

事業売却では、事業の売却代金は売り手企業が受け取るため、この利益は法人税として徴収される対象となります。また、事業売却では株主に直接の税負担はありません。

このように、どこに税金が発生するのか正しく把握することは、M&Aを実施する上で不可欠な要素と言えます。
それぞれについて、説明していきましょう。

事業譲渡(全部譲渡)で発生する税金

まずは事業譲渡の中でも、全ての事業を譲渡する「全部譲渡」で発生する税金について解説します。法人税や消費税などの課税対象が「誰になるか」について確認していきましょう。

法人税は売り手企業に課され、株主には課されない

事業譲渡とは、売り手企業の事業を買い手企業に譲り渡すことです。

売却の対価は売り手企業が受け取るため、法人税は売り手企業に課されます。

特に、事業譲渡では売却金額が「譲渡する事業資産」と「負債」の差額を超えて売却利益が出た場合に課税対象となります。

事業売却に対して消費税が課される

事業譲渡では、買い手企業が支払う対価に消費税が課されることになります。

消費税は売買する事業の中に「有形固定資産」や「棚卸資産」「営業権」などが含まれている場合に発生します。

現在の消費税は8%のため、買い手企業の買収金額は売り手企業が示した売却代金に消費税を加えたものとなります。

株式譲渡には消費税が課されることはありません。そのため、株式譲渡から事業譲渡に変更する場合は注意が必要です。

注意点:事業譲渡の売却代金の詳細は決まりにくい

譲渡する事業が在庫などの棚卸資産を抱えている場合、譲渡を行う際に棚卸しをしなければ、正確な売却代金を確定することはできません。

売却資金が高額になりそうな場合には、本年度決算が始まった当初にM&Aをすることが推奨されています。決算月までに時間があるため不測の事態に備えるほか、必要な対策を打ちやすくなるというメリットがあります。

事業譲渡(一部譲渡)で発生する税金

上記では全ての事業を売却する全部譲渡で発生する税金について解説しました。

それでは、事業の一部だけを売却する「一部譲渡」にはどのような税金がかかるのでしょうか。

基本的に全部譲渡であっても、一部譲渡であっても、売買の性格が「事業譲渡」である以上、発生する税金の種類はあまり変わりません。

つまり、買い手企業には「消費税」が発生し、売り手企業には一定の条件を満たせば「法人税」が発生します。

ただし、以下の点には注意しておきましょう。

自社株式の相続税評価の変動

一部譲渡により、企業の業種が変わるケースがあります。これにより自社株式の相続税評価が変わってしまうことを「相続税評価の変動」といいます。

取引相場のない株式の自社株の評価方法は、「純資産価格方式」と「類似業種比準方式」があります。

「類似業種比準方式」で自社株を評価する場合、事業の一部譲渡で業種が変わってしまうと、税務当局から「類似業種比準方式」の利用を否定されるケースがあります。

業種が変わるような一部譲渡を行う際には注意が必要です。

この一部譲渡は、以下のケースで行われる傾向があります。

後継者の不在

企業に適当な後継者がいないケースです。

また、経営者が高齢化などの原因により、事業継続が難しくなった場合、自身で行える範囲の業務を残し、それ以外を売却することがあります。後継者が能力的に全ての業務を引き継げない場合にも、一部譲渡で身軽な体制を整えることがあります。

財務の健全化

これは、全部譲渡にも当てはまりますが、一部譲渡で得た資金を返済などにあてることで企業財務の健全化を図ることができます。

事業承継の際にも、借入金を減らしておくことで後継者の不安を軽減させることもできます。

株式譲渡における税金

株式譲渡で資金を獲得し、第二の人生を思い描いている経営者もいるのではないでしょうか。

中小企業が実施するM&Aでは株式譲渡が多く採用されます。

しかし、株式譲渡にも税金は発生します。どのようなケースがあるのか正しく理解しておきましょう。

譲渡所得に対して課税される

譲渡所得税は、売り手企業が自社株式を売却することで譲渡所得が発生した場合にかかる税金のことです。

この譲渡所得税は、以下のように計算することができます。
「譲渡価格」−「所得費+委託手数料など」=譲渡所得
譲渡価格とは「総収入金額」を指し、株式の譲渡対価として獲得する金額を意味します。

また、所得費や委託手数料などは必要経費のことです。

これらを差し引いた譲渡所得には、20.315%の税金がかかります。

確定申告は基本的に必要

給与を受けてる法人などが1ヵ所のみで給与の年間収入金額が2000万円以下であれば、確定申告の必要はありません。

しかし、給与外の所得が20万円を超える場合は確定申告が必要です。

株式譲渡が20万円を下回るケースはほとんどありませんので、確定申告は不可欠と考えておくことがいいでしょう。

合併における税金

企業間の合併の税制は非常に極端で、条件によって多額の税金が課される場合と、まったく課されない場合があるので注意が必要です。

多額の税金を支払うことにより、企業経営を傾けてしまうことに繋がらないようにどのような制度があるのか、しっかり把握しておきましょう。

税が発生する合併

税金が発生する合併のことを「税制非適格合併」といいます。企業間合併で、消滅会社に多額の税金が発生します。

消滅会社は合併時に、「合併対価」と「貸借対照表の純資産」の差額の「事業譲渡益」を受け取ります。
課税はこの「事業譲渡益」に対して発生します。

特に注意が必要なことは、この「事業譲渡益」の計算は「循環計算」という特殊な計算方式で行います。
専門家に相談し、正確に計算してもらうことが必要不可欠です。

また、事業譲渡益は、存続会社と消滅会社の手元の資金で支払うことが求められます

課税額を事前に把握しておかなければ、税金で資金繰りが困難になりかねないため、注意が必要です。

消滅会社の株主に税金が課される

税制非適格合併では、消滅会社の株主に対しても税金が発生します。

消滅会社の株主は、存続会社の株式の交付を受けます。この株式は、消滅会社から配当されたものであるため株式譲渡の扱いにはなりません。

個人の場合、配当所得として所得税がかかります。

一方、法人の場合は受取配当金として利益計上されてしまいます。

特に個人については、最大で49.44%の税金が課せられることもありますので注意が必要です。

税が発生しない合併

税金が発生しない合併もあります。
この合併のことを「税制適格合併」といいます。

税制適格合併では、存続会社と消滅会社の両者の株主に税金が発生しません。

これには以下の2つの条件を満たす必要があります。

①同一企業のグループ内の合併であること

②対等合併であること

対等合併とは、合併企業が自主性を保ちつつ行う合併を指します。
また、これには要件があるため紹介します。

例えば、「金銭等不交付要件」は、合併の対価として合併法人の株式及びまたは合併法人の完全親法人のどちらかひとつの株式以外において、資産が交付されないことなどがあります。

ただ、この税制適格合併の条件は複雑なため、事前に必ず専門家に相談しましょう。

まとめ

ここでは、M&Aで発生しうる税金について解説しました。
消費税だけでなく、売却で得た利益に対しても税金は発生します。税金を正しく理解しておくことにより、必要以上の支払いを抑えるなどの対策を事前に講じることができます。

税制については、より専門的な知識が必要なため、専門家に相談しながら検討を進めましょう。