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M&A(エムアンドエー)における子会社化のメリットとデメリットとは

M&A実施には良い面だけではなく、悪い面もあります。M&Aを実際に行う前には、それぞれが自社にどのような影響を与えるか可能性があるかという点を把握しておく必要があるでしょう。

今回は、M&Aにおける子会社化するメリットとデメリットをご紹介します。

会社の子会社化とは

M&Aには詳しくなくても「子会社化」という言葉を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

「子会社化」とは、ある会社が他の会社の発行済株式の半数以上を他の会社の株主から買い取ることを指します。

例外ではありますが、買収した発効済株式が半数以下の場合だったとしても実質的な支配を基準として、子会社化したと表現するケースもあります。

子会社化と買収の違い

ここでは子会社化と買収の違いを見ていきます。

子会社化とは、ある企業が他の企業の発行済株式の半数以上を買い取ることを指します。

また、外部企業による子会社化だけでなく、企業の内部の場合ではある事業部門を切り離し、独立させて新たに法人を設立することで子会社化するケースもあります。

親会社は子会社の株式の過半数を取得していることから、傘下となった子会社の経営の意思決定を支配することが可能です。

一方、企業買収とは他社の経営権を獲得することを目的として、企業が他の企業の発行済株式をすべて買い取ることを指します。

つまり、株式を買い取る割合によって、他の企業の経営を支配できる範囲が異なってきます。

例えば、取締役の選任や解任、配当金額など、普通会議の決定事項を確定する権利を獲得しようとするならば、議決権を持つ株式の過半数を買い取ることが必要です。

また、定款の変更や組織再編の承認を求めるほか、特別会議における決定事項を決めるような権利を求める場合、議決権を持つ株式の3分の2以上の買い取りが必要になります。

■チェックポイント


子会社化のメリットとデメリット

会社は経営が順調に推移し、事業規模が大きくなるほど組織は巨大化します。

意思疎通が不明確になるだけではなく、企業内派閥が深刻化することで企業運営に支障が出る可能性があります。

子会社化は企業を拡大すると共に、経営体制をスリム化することでそうしたリスクを回避する有効な手立てとなります。

メリット

親会社が他社や内部組織を子会社化するために別会社を新たに設立した場合、最大で2年間の消費税免税措置を受けることができます。

この制度を活用して、例えば子会社の収支が黒字化している際には、子会社の利益分を親会社に移転することで節税対策を図ることが可能です。

例えば、課税対象の売り上げが1000万円未満の場合、消費税の支払いが免除されるため年間で80万円の費用を抑えることにつながります。

また、内部組織を子会社化して経営の効率化を図ることで、意思決定権が移行することからより経営のスピード感が高まるでしょう。

経営のスピード感が高まるだけではなく、後継者問題の解決にもつながります。

例えば、後継者の候補者が複数人存在する場合は1人に絞りきることで社内紛争が生じかねません。

子会社化し分散化させることでそうしたリスクを回避することにつながります。

その他には、部門などが独立することで経営の自由度が増えることや大手企業の子会社となることで子会社の信用度が高まります。

また、子会社化することで事業の損益が財務諸表などを通じ、より明確になることがあげられます。

デメリット

子会社化にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。

子会社することで対外的な信用力が高まることもありますが、グループ内で不祥事が発覚した場合などは、グループ全体の信用力が低下することが懸念されます。

そして課税においてもデメリットとなるケースがあります。

例えば、企業が複数の事業で所得を上げている場合、そのなかで赤字が生じている際は一定期間内の利益と損失を相殺できる「損益通算」を行うことで、税金の額を減らすことが可能です。

しかし、子会社化することでこれができなくなってしまうので、該当企業にとってはデメリットになってしまう可能性があります。

■チェックポイント


完全子会社化とは

完全子会社とは、ある企業がすでに発効している株式を別会社が100%所有している状態です。

このように100%の株式を他社に所有されている場合、経営権を親会社に完全に経営権を譲渡している状態を指します。

また、ただの「子会社」では自社株の一部を所有しているためそれを売買することが可能ですが、完全子会社化すると親会社がすべての株式を所有してしまうことから、独自で上場することが不可能になってしまいます。

子会社化の成功事例

牛丼の吉野家を手掛ける吉野家ホールディングスは、煮干醤油ラーメンなどを提供する「せたが屋」の株式の66.5%を取得し子会社化しました。

せたが屋は屋内15店舗、国外3店舗を運営し、年商は約15億円です。

せたが屋の前島司オーナーは、これまでの考え方にとらわれない名物経営者として知られています。

商品開発だけでなく営業スタイルも有名で、2001年には昼間には塩ラーメンの専門店「ひるがお」の営業をスタート。夜間を「せたが屋」とする二毛作経営で名前を広く知られるようになりました。

商品開発では、調味料を一切使用しない「ラーメンゼロ」や、ヨーグルトの酸味を生かしたラーメンを提供し、従業員を女性だけとした「小麦と肉 者の木」を展開しました。

吉野家は、せたが屋社が持つ新業態を生み出す力を積極的に学んでいきたいとしています。

また、せたが屋も吉野家HDの傘下となることで、社内の労務環境の改善や従業員の満足度を高めるほか、食材コストの低減、仕入れ先の拡大などを図れるとしています。

完全子会社化の成功事例(花王)

子会社会の成功事例として化学メーカー大手の花王を紹介します。花王は2016年6月コリンズ インクジェット社(アメリカ)、チミグラフ ホールディングス(スペイン)を相次いで買収して完全子会社化しました。

コリンズ インクジェット社は、アメリカをメインにインクジェット用のインクの開発から販売までを手掛けています。

同社は、産業用印刷で使わる同インクの市場に早期から参入することでノウハウやネットワークを構築している会社です。

一方、チミグラフ社は、パッケージ印刷に用いるフレキソインクやインクジェット用のインクの開発から販売までを手掛けており、中でもインクジェットに用いるインクの開発に力を注いできました。

花王は今回のM&Aで、同社が開発を手掛けた水性インクジェット用の顔料色材とインクの販売網を確保、アメリカやヨーロッパでの拡販につなげる方針です。

また2020年には100億円を掲げていましたが、この目標を前倒しで達成し、2025年までに300億円することに引き上げました。

完全子会社化の成功事例(ダイキン)

ダイキン工業はここ10年で海外企業のM&Aを積極的に行い、2006年から10年間で売上成長、時価総額ともに年平均10%の上昇を達成しています。

そのきっかけは、2006年に全世界で空調事業とフィルター事業を展開するOYLというマレーシア企業の買収し、その会社が持つグローバルな販路を活用し技術中心の事業から、技術力を活かした強い営業体制を強化していったのです。

その後、米国で定評のある販路及びサプライチェーンを持つ「グッドマン」を買収するなど、販売網を着々と拡大しているのです。

■チェックポイント


子会社化メリット・デメリットまとめ

ここでは、M&Aにおける子会社化のメリットとデメリット、そしてその成功事例を紹介しました。

子会社化には組織の効率化や責任の明確化などの利点が多くある一方で、1つの不祥事がグループ全体のイメージダウンに直結しかねません。

子会社化を実行する前に、企業内体制の見直しなどが不可欠といえるでしょう。